ADR調整の実例報告 

管理費滞納事例(1)

                      マンション管理士 木 村 長 敏 

                     (マンションサポートネット活動委員/マンションADR研究所)

<テーマ>  現場実務におけるマンションADR実例報告について、

①    対話促進の必要性について。

②    重要部分についての誤解が生じている事例を解きほぐす必要性について。

 

管理費・修繕積立金滞納者からの相談事例

平成15年に中古マンションを購入して入居直後、共用部分に不具合を発見し、当初から管理組合に修補を請求したが、管理組合は、「購入時からの不具合であり知って納得して買ったはずだ」と主張して放置。

相談者は、共用部分について管理組合が適切な対応をしてくれないことを理由に支払いを拒否し、今日まで●●●万円を滞納している。

不具合の当初の主張は、かつてから1階が中華料理店であったが、そのダクトの点検口が相談者の部屋(直上階の2階)にあり、そこから煙草の煙、廃油、その他厨房の嫌な臭いがした。その後構造上の不具合も発見されたので、何回か理事の人が調査に来てくれたが、我慢すべきである、あんたは、変人であると言われ、まともに交渉する気になれなくなり、ますます、管理費は絶対に払うまいという気になり、交渉も多数でいじめのようになりだしたので、メモ書きによる交渉しかしなくなった。ますます、孤立化してゆき、閉じこもりがちになり、マンション内部でも変な人と陰口を言われるようになった。

管理組合から訴訟が提起されたが、第1回口頭弁論の期日が1週間後に接近していた。ところが、区分所有名義は相談者の娘名義であり、娘は、当初からすべて母親の問題であるといい、そのため に訴訟に巻き込まれるのを嫌い、訴訟を早く片付けることを希望し、娘との仲もうまくゆかなくなった。

かなり追い込まれ、自殺も考えた(2回目の自宅訪問の際本人陳述)。粘り強く事情を聞き、対処方法を一緒に考え、聴くことに徹した。そして、最後に私の方が間違っているのでしょうかとの相談があったので、一般的な解釈として次のような助言・指導を行った。

最高裁の判例も管理費滞納と管理組合に対する要求は同時履行の関係に立たず、支払い拒否の正当事由とならないということを説明。

供託原因としても支払い拒絶、支払い不能債権者不確知のいずれにも該当せず供託原因もない。したがって、管理費等については、法律的には債務不履行状態が継続していることになる。共用部分を管理組合が修補等してくれないことは当然に支払いを拒否できる理由となると思い込み、頑なになっていた区分所有者は、自らの正当事由のないことを悟り軟化。

ここ何年も管理組合とはメモだけのやり取りのみ。当事者として面と向かって話し合いがされていなかったことも反省し、直接話し合いをすることに向けて考え直した。滞納管理費も全額支払うことも決心した。管理組合に支払いをする旨の意思表示と今後の展開につき話し合いをすることを直接管理組合の理事長と話し合ったところ和解が成立。3回に分けて不払い分を支払い。管理組合としても不具合部分の調査を約束し、不具合があると認められれば修補することを約束。

検討課題

 事例について

(1)   利害対立が激しくなっている原因が、些細な法的判断の思い違いにある場合にどの程度専門知識の判断を提供すべきでしょうか。

(2)   まことしやかな理屈をつけて、正常な管理組合運営を妨害することに関しても一つ一つ丁寧に専門知識を提供しつつ、眠れる区分所有者の目を覚めさせ、管理組合を全体として正常化するには時間がかかります。パワーでもって、利権集団の排除を一気に行うことの難しさと不当性を感じます。時間がかかりますが住民パワーによる民主主義の芽生えを醸成することが結局近道となるのではないかと感じました。

 

 

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