京都市マンション管理セミナー
マンションサポートネットでは京都市と共催で京都市南区の京都テルサ東館セミナー室でマンション管理セミナーを開催しました。セミナーにはマンション管理組合役員、区分所有者、マンション住人その他マンション関係者98名の参加がありました。セミナー終了後の午後4時から個別相談会を開催し、滞納問題を中心に設備改修や耐震調査、地域コミュニティの扱いなどについて7組の相談がありました。また、会場内展示スペースにて設備関連を中心に管理組合向け製品・サービスを展示し、セミナー前後や休憩時間に普段見たり手にすることがない展示物に関心を寄せる人たちでにぎわいました。
開催日時:2013年11月2日(土)
開催場所:京都テルサ セミナー室
主 催:NPOマンションサポートネット
共 催:京都市 / 後 援:公益財団法人マンション管理センター
テーマ:設備改修と滞納処理の考え方持続可能な管理組合運営のポイント
~見えないところを大切に~
講 演1:『長期修繕計画定められた設備更新工事の実施判断について』
講師:藤井 英司(MSネット活動委員 1級管工事施工管理技士)
内 容:
国交省長期修繕計画標準様式に基づき項目分けすると、マンションの設備には給排水・ガス設備、空調・換気設備、電気設備(伝統・電気幹線等、情報通信)、消防用設備、昇降機設備などがある。(それぞれの設備の概要を説明)
設備の改修は維持保全、改良保全、予防保全、事後保全、保守などに分けることができる。またマンションの設備は個々のマンションで千差万別で、使っている材料や設備の方式も異なり、その他の環境によっても改修すべき設備が違ってくるので、一概に修繕時期の目安を定めることは難しい。また、建物の劣化と違って目に見えない箇所が多いことも修繕時期の判断をいっそう難しくしている。
ちなみに機器は次のような場合に寿命であり、更新が必要と判断できる。
1)故障の回数が多くなり、止まることでの被害が大きくなった時
2)交換部品が入りにくくなった時
3)修理が技術的に難しくなった時
4)性能が低下し、安全が維持できないと判断されたとき
5)性能が低下し、維持費が高くなってきた時
以上のとおり、マンションの設備改修は、まず現況を把握することが重要である。
その上で長期修繕計画によると修繕の時期が到来しているが、本当に劣化しているのか、今の劣化状況ですぐに改修しないといけないのか(機器の寿命の到来なのか)の判断しなければならない。
マンション設備の改修・更新時期の実質的な判断については、管理組合だけで判断が困難な場合は専門家にアドバイスを求めることも賢明な選択と言える。
講 演2:『滞納予防のシステムづくりと実効性のある回収方法について』
講師:木村 長敏 (MSネット活動委員活動委員 マンション管理士)
内 容:
管理費収入確保のための滞納予防と回収の三段階として、1)滞納事前予防措置 2)滞納が発生してからの措置 3)滞納措置終了後(しこりの残らない解決法~ADR手法~)が考えられる。
1)事前予防措置とは滞納が発生しにくい制度設計を施すことであり、具体的には管理費徴収および滞納処理についての規約・細則においての条文化が必要。
規約においては、管理費等を組合員の口座からの自動振り替えとすること、滞納が発生した場合遅延損害金や違約金としての弁護士費用や督促にかかる諸費用等を加算して請求できる旨、また未納管理費等の請求に関して総会を経ず理事会の決議のみで管理組合を代表して訴訟その他法的措置を追行することができる旨(標準管理規約第60条)などを定める整備が必要。
その他、滞納が起きた時には駐車場の使用申込み制限や使用中の場合は解約とするペナルティ協約などが抑止効果があるものとしてあげられる。一方掲示板・総会・理事会での氏名公表や、水道栓の閉栓などは人の名誉感情や生命身体に直接影響する行為として債務不履行の対抗策としては妥当でないという見解が多い。事前に滞納が発生して何か月を過ぎた段階で、支払督促、少額訴訟、その他通常訴訟に移行するのかをあらかじめきちんと定めておくことが肝要。
具体的督促手続きの段階的マニュアルを事前に作成する。また、委託管理の場合は委託契約仕様書による滞納処理の対応の確認と、実際に滞納が発生した場合の管理会社の対応を管理会社からの月次報告などで確認して、管理会社任せにしないよう留意する。電話、個別訪問、お知らせ、督促状などの口上例などをマニュアルに含めること。また、管理費滞納が発生しにくい良好なコミュニティ形成も必要である。
2)滞納が発生してからの措置は、内容証明郵便の送付から始まり段階的に移行する。判決手続は簡易裁判所における民事調停手続、支払督促申立、少額訴訟、通常訴訟、即決和解、担保権実行等からもっともふさわしいものを選択する。
3)(重要な提言)
法的手続き以外の方法・・円満な話し合い解決ADR(裁判外民事紛争解決手続き促進法)
「払いたくても払えない組合員」と「払えるのに払わない組合員」が存在することを理解し、「排除の論理」ではなく当事者同士の話し合いによる解決法(人間関係の破壊につながらない円満解決)の取組みは執行段階でも可能であり、成功すれば強制執行手続きが不要となり、再発防止にもつながる。